[のじのじ先生ブログ] 『I like dog.は犬肉が好き?』
日本人は簡単な英語も正しく言えません。
「私は犬が好きです」を英語にしなさいと言うと、ほとんどの日本人は I like dog. と言ってしまいますが、これは間違いです。 ネイティブには「私は犬の肉が好きです」のように響いてしまいます。 エッと思うかもしれませんが、英語で好き嫌いを表現する時は、必ず普通名詞は複数形にしないといけません。
正解はI like dogs. となります。 一匹でも2匹でも、とにかくいろいろな種類が存在する犬全体が好きなので複数形にするのです。 I like dog. では、冠詞が無いので、不可算名詞に考えられて、意味は形の有る「犬」ではなく、口に入る食べ物としての「犬の肉」のニュアンスになってしまうのです。 一般的に、「犬の肉」を食べる人はいませんので、この人は、「犬の肉」のことを言っている訳ではなく、単に複数形にして表現することを知らないのだろうと、ネイティブはクスッと笑って心の中で思ってくれるでしょう。 同様に I like chicken と言ったら、ほとんど人が、牛肉や豚肉ではなく、鶏肉が好きなのかと思ってくれるでしょう。 まさか「ニワトリそのものが好き」とは思わないでしょう。でも、もしペットとしてニワトリを飼っていて、ニワトリを可愛い動物と思って大好きなら、かならず複数形にして、I like chickens. と言わないと正しく伝わりません。
次に、不定冠詞を付けて、I like a dog. とすると、「私は何処かにいる一匹の犬が好きです」と言う意味で、ネイティブにはとても奇妙な英語に聞こえます。 1羽が好きだと言っているので、二羽や三羽では好きでないように響きます。
では、定冠詞を使って、I like the dog. とすると、「私はその犬が好きです」となって、特定の犬のことです。 もし状況によって「その犬が好きです」と言いたいのならOKです。 この場合は、一般的な「犬」を指すことにはなりません。
ちょっと視点を変えます。 果物の好き嫌いを言う時は、「それを食べること」が好きと言う意味になりますので、少しだけ注意が必要です。 次のように、リンゴもバナナも複数形にします。
I like apples. リンゴが好きです
I like bananas. バナナが好きです。
では、メロンもスイカの場合でも、I like melons. I like watermelons. で良いでしょうか?
実は、その場合は、あえて複数形にはしません。 ですから、I like melon. I like watermelon. となります。 食べ物としての不可算名詞にします。 つまり、大きくて切って食べる果物は複数形にしません。 大きな果物はそのまま口に入らないので、不可算名詞にしてあえて無冠詞となります。
さて、chickenの話題が出たので、動物の肉の英単語について面白い歴史的背景がありますので、少し説明します。
「鶏」はchickenで、その「鶏肉」も chicken なのに、何故、「牛」そのものはcow (cowは雌牛のことで、雄牛はox と言います。)と言うのに、「牛肉」はbeefと変化するのでしょうか? 「豚」も同じようにpig が「豚肉」になると、何故pork になるのでしょうか?
答えは、こういうことです。 実は beefもpork もフランス語から来た単語です。 フランス語では、動物の名前とその肉の両方を指します。 つまり、フランス語で、beef は「牛」そのものでもあり「牛肉」でもあるのです。 pork も、「豚」そのものもでもあり「豚肉」のことでもあるのです。
昔の人は「鶏肉」を食べた時に、おそらく 「鶏の肉」を食べたと言わずに 「鶏を食べた」、つまり、
I ate chicken.とだけ言ったのだと思います。 では、牛や豚の時はどうしたかと言うと、これも、フランス語にしたら、「牛を食べた」、「豚を食べた」と言っていたはずです。 このことから、英語圏のイングランドでは、最初の頃、肉と言うと鶏肉が主流であったと想像できます。 その後、大陸から牛や豚を食べる習慣が入って来て、彼らが言う beef、porkをそのまま英語でも使い始めたのだろう推察できます。 そこで歴史を調べてみると、やはりその背景が分かりました。 ノルマン人のイングランド征服に関係がありました。 元々スカンジナビアに居たノルマン人は、家畜を育てる民族でした。 北欧からフランスに移動し、その後、1066年にイングランドを征服しました。 ノルマン朝時代にはフランス人が支配者となって、イングランドの先住民サクソン人を召使に使っていた時代がありました。 家畜の牛の番をしているサクソン人は目の前にいる牛を cow (ox) と呼び、その料理された肉を食べる主人であるフランス人はbeefと呼んだということになります。 このことから、家畜にされていた牛、豚、羊は、料理されると呼び名がフランス語風に変わってしまったのです。 動物名とその肉の言い方をまとめると、次のようになります。
英語 フランス語
動物名 肉 動物名もその肉も同じ
牛 cow (ox) beef ビーフ boeuf ブフ
子牛 calf veal ヴィール veau ヴォ-
豚 pig pork ポーク porc ボール、又は、ボルク
羊 sheep mutton マトン mouton ムートン
もう一つ、英語で鶏と同じように動物名と肉が同じものがあります。 子羊のlamb です。 大人の羊のsheep が肉になるとmuttonに変わるのに、lamb は肉料理になってもlambのままです。
では、次回の「のじのじブログ」も楽しみにしていて下さい。