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[のじのじ先生ブログ]『サン・ピエトロ大聖堂の"ピエトロ"とはどんな意味?』

先日、バチカン市国の世界遺産DVDを見ていて、気付いたことがありました。

カトリック総本山のサン・ピエトロ大聖堂 (San Pietro) の英語の名称を見て気付いたことです。 この大聖堂は、サン・ピエトロ寺院セントピーター寺院聖ペテロ大聖堂とも呼ばれます。

この大聖堂を英語にすると、St. Peter となり、発音は"ピーター"となります。 ロシア語では、有名な街の名前であるサンクトペテロブルクのサンクトの部分が"聖"部分。ペテロと発音される部分は、大帝の名前でもあった"ピョートル"に当たります。イタリア語の"ピエトロ"も英語のピーター、ロシア語のピョートルも同じ意味です、フランス語では、Pierreで"ピエール"です。 実は、これらのPeter PitroPierreの本来の意味は「石」なのです。似た発音で道化師のピエロがありますが、フランス語でpierrot と書きます。実は、これも pierre が変化したもので、語源は同じです。

このサン・ピエトロ大聖堂はキリストの最初の弟子のペテロの墓所を祀る聖堂として建てられました。このペテロは、英語スペルでは、Peterとなります。つまり、あの童話のピーター・パンのピーターも、実はこのペテロが始まりでした。

調べてみると、キリストの生きていた時代には、人々には苗字はなく下の名前だけだったそうです。 イエス・キリストも、名前はイエス (Jesus) ですが、キリスト (Christ) の方は苗字ではなく、「油を注がれた者、救世主」と言う意味の称号です。 ヘブライ語のメシア(Messiah)をギリシャ語で「救済する人」の意味になるキリストに変ったものです。 この理由で正しい和訳は「救世主のイエス」となります。 英語の発音では、ジーザス・クライストです。

ペテロの話に戻ります。 ペテロも苗字でなくて下の名前になります。ペテロの初の名前は、シモン(Simon)だったそうですが、イエスが彼のことを「石」の意味のペテロと名付けてから、名前が変わりました。 イエスが何故名前を変えさせた理由は今でも分からないようです。

なるほど、「石油」 の petroleum も、同じ語源の「石」が由来でした。 映画「インディー・ジョーンズ」の舞台になった世界遺産のペトラ遺跡がヨルダンにありますが、岩山の谷間に築かれた天然の城塞都市です。岩を切り抜いて完成した都市です。 ギリシャ語でペトラは「岩石の崖」の意味ですから、石の遺跡であることに頷けます。また、先史時代に石や岩に刻み込んだ象形文字や絵のことを「ペトログリフ (petroglyph)」と言いますが、ギリシャ語の「石」のpetro と「刻む 」のglyph で出来た造語です。

こんな風に、欧米の社会に浸透している名前の起源が、聖書に登場するキリストの使徒に多いことに驚きます。 キリストには12人の使徒がいましたが、数名だけ挙げてみましょう。ぺテロ、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ、ヤコブ、アンドレ、トマスなどです。キリスト教徒には当たり前の名前だと思いますが、キリスト教徒でなくても、これらの名前はどこかで聞いたことがあるでしょう。 英語のスペルは次のようになります。

Peter、 Matthew、Mark、Luke、John、Jacob、 Andrew、 Thomas

Peter は、既に説明したように、フランス語では ピエール Pierre となります。

Matthew は、Mattが愛称になります。

Markは、そのままマークと発音されます。

Lukeは、ルーク。

John は、ドイツ語では ヨハン (Johann) に、フランス語では ジャン (Jean ) と変化します。Jacob は、James や Jackが愛称になります。

Andrew は、 愛称としてAndy に短縮されることが多いです。

Thomas は、Tomが愛称になることが多いでしょう。

これを書いている時に、たまたま本棚を整理していて、半世紀前に読んだ芥川龍之介の「西方の人」と言う本を見付けて、ちょっと開いてみると、彼は洗礼を受けてキリスト教徒にはなった訳ではないですが、イエスのことを研究して独自のイエス論を書いています。 面白いことに、芥川は本の中でイエスをキリストではなくクリストと呼んでいます。

また、世界遺産の一つで、フランス西岸の湾に浮かぶ有名なモン・サン・ミッシェルも、英語のスペルでは、Mont Saint Michelです。 Montは、フランス語で山ですから、「大天使ミカエルの山」と言う意味です。 英語ではマイケルですが、フランス語ではミッシェルとなります。 Michaelの愛称が、Mickeyですから、語源的には、ディズニーのミッキー・マウスも映画俳優のマイケル・J・フォックスも、この大天使ミカエルに繋がっていることになります。

歴史上の有名人物の名前は、国が違うと発音が異なるだけで、元は同じであることに驚かされます。

15世紀のモスクワ大公国(ロシア)の皇帝にイワン3世がいましたが、このイワンの Ivan はJohn がロシア語になったものです。

チャールズ Charles も、ドイツ語では カール (CartまたはKart)、ポルトガル語では カルロス (Carolus) です。 レバノンに逃亡した日産自動車元社長 のカルロス・ゴーンは、英語で発音すると、チャールズ だったのです。 他にも、ヘンリー (Henry) は、ドイツ語では ハインリッヒ( Heinrich) に、 フランス語では アンリ (Henri) になります。

アメリカの有名な歌手のマドンナ (Madonna Louise Ciccone) も、聖母マリアのことですが、「私の淑女」と言う意味のイタリア語です。 英語にすると、メアリー (Mary あるいはVirgin Mary) です。 別称では、マリア (Maria) となります。

色々な名前の語源的な繋がりが分かると、意外な発見があり大変面白いです。


以上

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